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Vol.4
BlackEyePatchとWILDSIDEが作り上げた世界観
BlackEyePatch
WILDSIDEコラボレーションキュレーター
小木”POGGY”基史

東京を拠点に、多くのサブカルチャーを取り込みながらブランドとしての世界観を形成するBlackEyePatch。WILDSIDEとの協業で見えてきたブランドのコアとは。

ーー今回は、WILDSIDEとBlackEyePatchのコラボレーションによる、NoirEyePatchのコレクションについてお話を伺えればと思います。まず、このコラボのきっかけから伺えますか?

POGGY:自分はWILDSIDEのコラボレーションキュレーターを務めさせてもらっているんですが、WILDESIDEとのチームのミーティングで、どういったブランドとコラボレーションしたら面白いかというディスカッションをしているときにBlackEyePatchさんの名前を出させてもらいました。自分的には、YOHJI YAMAMOTOとBlackEyePatchは作っている洋服こそ違えど、テンションが近いなという風に感じていたので、BlackEyePatchチームにオファーさせてもらいました。

BlackEyePatch:ビックリしましたけど、凄い光栄だと感じました。勿論、YOHJI YAMAMOTOというブランドのことはずっと知っていましたけど、まさか自分たちのブランドが携わるというのは想像もしていなかったので。お話を頂いて、どういったクリエイションが一番面白くハマるのかな? ということをすぐに考え始めました。そのときに、POGGYさんに提案して頂いた、BlackEyePatchの”Black”を”Noir(注:フランス語で”黒”の意)に変えるっていうアイデアが凄いしっくり来たんですよね。結果的にブランドの定番のロゴのフォーマットにもしっかり収まったので、僕たちとしても凄い新鮮で良いものが出来ました。

ーーコレクションのラインナップは、普段のBlackEyePatchの世界観に近い、非常にカジュアルなものですよね。

BlackEyePatch:自分たちはグラフィックに特徴があるブランドなんですけど、洋服の形とかに関してはいわゆるメンズのカジュアルなものが多いです。今回も、自分たちがこれまでに作ってきたようなものに対して、YOHJI YAMAMOTOのデザインの要素がうまくハマったところをコレクションとして出したいと考えた結果、今回のラインナップになりました。

POGGY:自分はテーラードジャケットを中心にカジュアルなストリートテイストのものをMIXするのも好きですし、YOHJI YAMAMOTOというブランドもテーラードジャケットなどを主体として作られていることが多いので、そういう世界観に合わせたら面白いなと思うアイテムだと思います。たとえば、テーラードジャケットの中にベースボールシャツを合わせたりとか。そういう着こなしが好きなので、自分としても凄い好きな、着たいと思えるアイテムですね。普遍的なカジュアルアイテムだからこそ、着こなし方によって印象が変わるのが面白いと思います。

ーーWILDSIDEにとっても、ここまでカジュアルな構成のコレクションというのは初めてですよね?

POGGY:そうですね。単品でTシャツを3型とかはあるんですけど、こういうしっかりしたパッケージでというのは初めてですね。スウェットのカーゴパンツとかも、懐かしいですね。赤のステッチとかも00年くらいを彷彿とさせますね。コントラストが当時っぽい。

ーーちなみに、POGGYさんが先ほどおっしゃられていた、YOHJI YAMAMOTOとBlackEyePatchのテンションの近さというのは、どのようなところから感じていたのでしょうか?

POGGY:今回のWILDSIDEっていうお店も、耀司さんがルー・リードと親交があったところから、ルー・リードの名曲の一つからインスピレーションを受けて、”WILDSIDE”と名付けられたんですけど、メインストリームではなくてちょっと脇道のような場所をわざと歩んで行く感じいうんですかね。BlackEyePatchさんが初めて東京ファッションウィークでショーをやった際も行かせて貰っていたのですが、日本のユースカルチャーの色んな要素が詰まったショーで凄かったんですよ。能楽堂の跡地で、Graffiti Writerの方が大きく描いた松の木を背景に、旧車のバイクがステージの上を走り回ったりしていて(笑)。

BlackEyePatch:自分がショーをやるまでに、ファッションショーというものに行ったことがなかったので、実際にショーというものがどういうものなのかも分かっていなくて。ほぼ文化祭みたいな感覚でしたね(笑)。

POGGY:たとえに出すのはちょっと変かもしれないですけど、SUPREMEとかも作っているものはカジュアルでも、ビジュアルでは一流のファッションフォトグラファーを起用していたり、アートもハイアートからリアルなストリートの人たちまで色々巻き込んでいたりしているじゃないですか。BlackEyePatchも写真に凄いこだわっていて、ちゃんとエレガントさもあるというのが凄い共通するなと。ワイルドサイドな部分と、見てるところのエレガントなところのバランスというのが。

BlackEyePatch:ありがとうございます。

ーーBlackEyePatchは、ファッションについて学ばずにスタートさせたブランドだということでしたが、今後そういうブランドってどんどん増えていきますよね。ファッションというカルチャーが他のカルチャーと結びつく流れとも言えると思いますが、そういう状況をPOGGYさんはどう捉えていらっしゃいますか?

POGGY:今、色んなカルチャーとファッションが混ざり合うことが多い理由は、時間軸の話だと思うんです。どういうことかというと、車だったら最低10年とかの時間軸で考えて動いてますよね、アートはその人の人生がアートになるので時間軸が本当はもっと長い。そういう中でファッションは、半年毎の流行で移り変わっているので、時間軸を今に持ってくることが出来る。今こうしたら格好良く見えるよ! っていう視野を与えるというのがファッションの出来ることだと思うので、他の業態もファッションと繋がりたいと考えるんだと思います。そこは自分たちの強みだと思います。

BlackEyePatch:そうですね。ファッションほど流行に日々変化がある分野も少ないですもんね。

POGGY:ファッションを学ばずにブランドを始めるというのも、自分はとても良い流れだと思うんです。けど、海外の人が日本のブランドに期待していることって、やっぱりモノづくりの部分なんですよ。日本のブランドって、モノづくりにこだわり過ぎてプレゼンテーションが上手くないブランドが多いので、BlackEyePatchのプレゼンテーションに、モノづくりという部分が組み合わさったら鬼に金棒だと思うんですよね。こういうコラボレーションをきっかけにでも、出来るところからアップデートしていったら唯一無二の存在になるんじゃないかなと期待しています。
たとえば暴走族のカルチャーとかも、今海外でめちゃくちゃファッションとして評価されていて、族車の単車が物凄い値段になっていたりしているじゃないですか。自分たちが本当は世界に誇って良いのに、なかなかきちんと評価されていなかった部分を、BlackEyePatchがちゃんとファッションとしてフックアップしているっていうところが、僕は本当に凄いなって思っていて、むちゃくちゃ面白い存在だと思ういます。蛇足ですが、YOHJI YAMAMOTOもBlackEyePatchも取扱注意な人が着ると似合うっていう共通項もありますよね(笑)。

BlackEyePatch:ブランドとして不良を推してる訳でもないんですけど、なんなんですかね。でも、そこが興味深く見えるというか、美しく見えるというか… そういえば、北野武監督の『BROTHER』の衣装もYOHJI YAMAMOTOですもんね。凄い印象深いです。そういう形で、自分達でも気付いていないレベルで、色々と影響を受けていると思うんですよね。

ーーBlackEyePatchとして、日本の様々なサブカルチャーをピックアップして洋服として落とし込むというのは、どれくらい意識的にやっていることなんですか?

BlackEyePatch:そこはかなり意識しています。自分は東京で生まれて、ずっと東京で育って来て、そこから欧米のカルチャー、音楽でいうとHIP HOPのカルチャーを10代のときに知って、凄いそこに憧れを抱いて沢山影響されてきたんですけど、自分がクリエイションとして何か作ろうと思ったときに、自分が実際にその場で感じて来たものではないものを、自分がやる必要は無いのかなと感じて。10代のときに経験したことや見てきたことを、憧れていたものに置き換えようと考えたときに、結構日本にも色んなものがあるなと思って。それは、別に”日本”を打ち出そうとか、”東京”をブランドとして打ち出そうとかではなく。自分たちが通ってきたものを、自然とクリエイションに出すっていうのを意識していますね。

POGGY:写真集も毎回面白いものを出していますし、そういうのを見ると、BlackEyePatchというブランドが、ただのストリートブランドではないと思うんですよね。WILDSIDEでこのNoirEyePatchがどのような化学反応を起こすのか、とても楽しみです。

BlackEyePatch クリエイティブディレクター
グラフィックデザイナー/アートディレクターとしての活動を経て、2013年にBlackEyePatchをスタート。ブランドのクリエイティブディレクターを務める傍ら、クリエイティブディレクション、アートディレクション、製作を展開するクリエイティブチーム<アンカー>の代表を務める。