WILDSIDEの為にセットアップを製作したPROLETA RE ARTデザイナーPROT氏と紹介者でもあるWILDSIDEキュレーターPOGGY氏へインタビュー
―まずはブランドの成り立ちから教えてください。
PROT:最初は古着をカスタムして製作したものを、販売する手段が分からなかったのでインターネットオークションに出品していました。週に3-4点ほどを毎週日曜の夜に出品し、落札されるか分からない状態でドキドキしながら1週間を過ごす、というような生活をしばらく続けていました。幸い全ての作品に落札者がいて、パーカーが数千円で落札されることもあれば、Gジャンが数十万円で落札されることもあり本当にまちまちでしたが、たくさんの入札が入っていて、自分としてはエキサイティングでしたし満足していました。
ある日、Instagramを何となく眺めていた時、自分がオークションに出品した作品が海外のアーカイブ系のアカウントにアップされているのをたまたま発見し、キャプションには「70’s vintage custom denim jacket」と記載されていました。それを見て、「私が作ったものです。」とコメントしました。そこから自分のアカウントでも過去に作った作品を投稿してみると、アクセス数が増え認知されていき、問い合わせが来るようになりました。これを機会に、正式にInstagramで発信するオーダーメイドのブランドとしてスタートしました。PROLETA RE ARTというタグは、オーダーメイドを始めるようになってから正式につけました。スタート時もまだオークションは続けていましたが、オーダーメイドの需要が増え、オークションに出品する時間がなくなってきました。やがて、セレクトショップからのオーダーの問い合わせも増えてきて、今は、セレクトショップへの提供とオーダーメイドの両方を行なっています。
ただ、オークションへの出品はとても楽しかったので、時間を作って不定期でまた出品したいと思っています。
―ブランド名の由来を教えてください。
PROT:資本主義社会における無産階級の賃金労働者の”PROLETARIAT”という言葉から引用していて、そのスペルを、「労働をアートとして転生させる」というコンセプトと意味を込めて”RIAT”を”RE ART”にアレンジしました。
1度洋服として労働を終えた古着や古布などの素材に、リペアをし、カスタムし、ビンテージ加工をして質感を加速させる「ハッキング」を施すことにより、アートに転生させ新しい命を吹き込む。それが壊れたら、また直す。ただ直すのではなく、デザインを加えたリペアを施す。経年変化だけじゃない味わいを出せる服作りがしたいと思い、この名前をつけました。
また、私がとても好きな日本のラッパーの「PRIMAL」という方の「PROLETARIAT」というタイトルの16曲入りのアルバムがあります。私が体調を崩して前職を退職したタイミングにこのアルバムを聴き込んでいて、リリックや声、アーティストの実直な人格、そしてビートがとても心に響き、24時間ずっとこのアルバムを聴いていることもありました。そういった経緯から「プロレタリアート」という言葉がずっと頭にあったというのも1つの由来です。
今思い返せば、当時の私のメンタルとこのアルバムのテンションがとてもリンクしていたのかもしれません。
―POGGYさんとの出会いについてお聞かせください。
POGGY:1年ほど前に取材を通して出会いました。私がPROLETA RE ARTさんに興味があったので、取材に行きたい、と言ってアトリエを訪問させていただきました。
実際に訪問した際、全ての作業を2人だけで手作業でされていることに衝撃を受けました。
一回デニムを分解し、裏地やバンダナを貼り付けて、ハンドステッチや刺繍、ミシンステッチを施した後にもう一度組み直して、加工して、もう一度解体して、ほつれないようにボロボロのところをステッチして、その後また加工で色を染めて。ボタンやパーツも自分たちで加工して錆びさせたものをつけたり。クオリティがとても高く、本当に度肝を抜かれました。
PROT:初めてアトリエでお会いした時に、たまたまオーダーメイドで作っていたBOROのジーンズが1着ありました。加工を限界まで施したため、縮みすぎてお客様にお渡しできないものだったんです。その縮んだジーンズを、POGGYさんが、「履いてもいいですか?」とおっしゃり、試着されたらたまたまサイズがぴったりでした。
POGGY:その場で購入させていただきました(笑)
PROT:ちょうどフレアシルエットの古着のジーンズをカスタムしたもので、POGGYさんが気に入ってくださるシルエットでした。自分には小さすぎて履けなかったのでどうしようと思っていたところでした(笑)
―ファーストインプレションが響いて、ずっとお付き合いをされるようになったのですね。
POGGY:そうですね。オーダーメイドを中心にした展開方法という新しい手法で、海外でも知られている存在になっていることも本当にすごいと思っています。
―WILDSIDEとのコラボレーションのきっかけを教えてください。
PROT:POGGYさんからのご連絡でお誘いいただいたのがきっかけでした。昔からヨウジヤマモト社のアイテムが好きで、新品ではなかなか買えなかったのですが、学生の頃から中古で買ったり、オークションで買ったりしていました。まさかコラボレーションのお話が来るとは想像もしていなくて、ぜひやりたいとお伝えしました。
―第1弾の作品はどういう気持ちを込めて製作いただきましたか。
PROT:PROLETA RE ARTのコンセプトである「UROBOROS」(「破壊と再生、永続性などを意味するUROBOROSという言葉から引用した、BOROをモチーフにしたアップサイクルのコンセプト)をテーマにし、ヨウジヤマモト社のシンボルカラーである「黒」にこだわり、黒いバンダナや古布などを用いて製作しました。
黒色のビンテージ加工はとても難しく、特にバンダナなどに使われている黒色はビンテージ加工をすると白くならず赤くなってしまうことが多いですが、変色のさせ方、洗い方や染め方を試行錯誤し、変色後も自然な色に見える方法を編み出しました。その結果、第1弾でリリースした作品は、ビンテージ加工の仕方で自然な仕上がりになったと思っています。
―とてもかっこいい作品でした。ビジュアルも反響がありましたね。
ビジュアルを見た時、とても感動しました。
窪塚愛流さんが髪の毛をオールバックにして、コラボレーションのセットアップを着用した姿がとてもかっこよく、モード的表現とアート的要素の強い写真だなと思いました。モノを作ることしか頭にない私にとって、自分の意思ではない部分で完成された「モード」というフィルターが入ったビジュアルになったことにも、コラボレーションの醍醐味を感じました。
―2023年1月に展開する第2弾の作品にも、ビンテージのバンダナや古布がたくさん使用されていますね。
POGGY:実際にビンテージのバンダナって世の中から無くなってきていますよね。第2弾に使用されている古布も100年前の貴重なものです。ただ、PROLETA RE ARTさんはビンテージを使わなきゃということではなく、感覚的にかっこいいから使うというイメージで作品を作られているかと思います。
PROT:おっしゃる通り、古い素材で表情が出ているものを使用することも多いです。ただ、本当に古いものであろうと、そうでないものであろうと、加工のクオリティ次第でビンテージのオーラや風合いを超えることができると私は思っています。古いから貴重なものなんだ、と言ってビンテージやアンティークを大事に保管するだけでなく、あくまでファッションなので、実際に着用してかっこいいかどうか、という感覚を大事にしたいと思っています。
ビンテージなのか加工なのかがわからないように両方混ぜて、ビンテージよりオーラがある、混乱させるようなものを作りたいと思っています。
「ハッキング」のようにオリジナルの状態よりもパフォーマンスを飛躍的に伸ばしたり改変させる。そのほうが面白くて、そういったことを洋服でもできたら、と思っております。なので、古い素材もそうでない素材も使いますし、バンダナや古布のようなルーツの異なる素材も使って、訳のわからない組み合わせをしながらも、加工によって一体感が生まれるようにする。
それもあって、当初出品していたオークションサイトには、「PROLETA RE ART」と記載しないようにしていました。「古着のカスタム品です。」としか書かず、質問が来ても答えない。
商品画像とサイズ感などの短いキャプションだけ掲載し、興味を持った方に好きな金額で買ってください、という方針で、ビンテージコレクターを惑わせるようなアイテムを作るのも面白いと思ってやっていました。
―第2弾の展開を楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
一度人の手を離れた古着を究極に作り込んだリペアとカスタマイズ、ヴィンテージ加工による「ハッキング」を施し、「一生手放したくなくなる服」を作る事を目的に、2021年3月にスタート。
PROLETA RE ARTはデザインから仕上げまで全ての工程をアトリエで行うことで、作品のクオリティをコントロールして、自身のイメージを理想の形に具現化する。
PROLETA RE ART 商品ページはこちら
https://wildside-online.jp/shop/r/r5010/