ヨウジヤマモト社と関わりの深いアーティスト 内田すずめ氏とWILDSIDE YOHJI YAMAMOTOのコラボレーションが実現。
アイテムのディレクションを行なったWILDSIDEキュレーター POGGY氏を交えた対談&インタビュー。
―内田すずめさんとPOGGYさんの出会いと、お互いの第一印象をお伺いできますか。
POGGY:内田さんとは、僕がプロデュースしている『スナック野郎POGGY』で初めてお会いしました。
直接お会いする前より先に内田さんの絵を見ていたので、絵の印象が強く、少し気難しい方なのかなと思っていましたが、実際にお会いするととても優しい気さくな方だったので驚きましたね。
内田: 3~4年前に友人から、「いつか一緒にお仕事がしたいと思っている、POGGYさんというすごい人がいる」という話を聞いて知りました。私はファッションにおいてその友人のことを尊敬していて、その尊敬している友人が尊敬しているPOGGYさんという方は、とてもすごい方なんだろうなと思っていました。
初めて実際にお会いしたのは、POGGYさんのおっしゃる通り『スナック野郎POGGY』でした。その時、養命酒のボトルを分けてくださって、飲んでいるお酒まですごく面白いなと思いました(笑)
―内田すずめさんが描く絵に対してのPOGGYさんの感じた印象はいかがでしたか。
POGGY:悲しさのある、繊細なもの、という印象です。
何年か前に新宿伊勢丹で行われた、内田さんとヨウジヤマモト社とのコラボレーションのポップアップストアを見に行った際、実際に絵を見させていただいたのですが、とても繊細に描かれていて感動しました。
―内田すずめさんがアーティストを目指したきっかけを教えていただけますか。
内田:絵の道に進もうと思って描き出したのは27歳の時でした。
それまでは会社員として働いていたのですが、体調を崩して辞めて、色々なことがある中で、やっぱり子供の頃から好きだった絵でもう一度頑張ってみたいという思いが生まれました。
そこまでを話すと聞こえがいいのですが、体調を崩して週5で働くことも難しい現状の中で、これからどうやって生きていけばいいのか、東京で暮らしていくにはどうしたらいいのか、ということを考えた時に、自分の中で選択肢として残っていたのが”絵“だったんです。
自殺するか、絵を描くか、という崖っぷちの中で“絵”にかけてみようと思った経緯がありました。
ただ、今となっては、その時に覚悟が決まったということではなく、実際に絵を展示して販売していく中で、私のことを”絵”で認めてくれる人たちとの繋がりができ、絵を描き続ける責任を感じた時に覚悟が決まりましたね。
自分がこの世に生まれた役割や意味を考えた時、私には”表現”なのかなと思い、絵を描くことを一生続けていこうと思いました。
―内田すずめさんはヨウジヤマモト社と関わりが深いかと思いますが、どういったきっかけからでしたか。
内田:2017年の春に、いきなり私のメールアドレス宛に「Yohji Yamamoto POUR HOMMEのお仕事なのですが、ご興味ございますか」とメールを頂いたのがきっかけです。
当時、ヨウジヤマモト社のアトリエで女性の顔を服にプリントするという案が出ており、女優顔のリアルな絵を描けるイラストレーターや画家を探していたそうです。
その中で、山本耀司先生が私を選んでくれました。とても運が良かったんです。
そのシーズンのコレクションのランウェイでは、ラストルックまで私の絵が入った服を使っていただき、とてもびっくりしました。
―今回、WILDSIDEのコラボレーションのために『祈る手』をモチーフとした絵を描いていただきました。
POGGY:内田さんに描いていただいた『祈る手』は、ストリートファッションの中でも重要な意味を持つモチーフだと思います。それを内田さんが「昔から描いてみたいと思っていた」と伺い、今回のコラボレーションのモチーフとして描いていただくことになりました。
内田:世界で戦争が起こっていたり、自分に子供が生まれたり、という状況から、”祈る”ということに対して自分の気持ちがリアルになっていた時期だったので、『祈る手』は本当に今一番描きたかった絵だったんです。
今回、WILDSIDEとのコラボレーションで描けることになり、POGGYさんに背中を押していただいたような気がして、とても嬉しかったです。
―コラボレーションアイテムのラインナップは、どういった経緯で決まりましたか。
POGGY:これまで内田さんがコラボレーションをしてきたYohji Yamamoto POUR HOMMEとは異なる、WILDSIDEならではのアイテムとして、Tシャツやフーディーの他にも、スケボーやステッカーもラインナップしています。
ミュージシャンがいい曲ができたら様々な人に聞いてほしいと思うのと同じで、今までとは異なるジャンルの人たちへ自分の作品を知ってもらうという意味を込めて。
そういった気持ちは内田さんにもあったと思います。
内田:そうですね、そういった気持ちがありました。
新しい方と出会うきっかけになったら嬉しいです。
―ヨウジヤマモト社ではなかなか無いアイテムラインナップで新鮮ですね。
POGGY:内田さんの絵がスケボーやステッカーに落とし込まれると、今までとは異なるイメージになり面白いですよね。
また、ヨウジヤマモト社で普段から使われているTシャツのボディは、ヴィンテージでよく見られる仕様であるシングルステッチが施されていますが、今ではとても貴重とされているディテールです。フーディーが丸胴で作られているのも良いですよね。丸胴って、洗えば洗うほど自分の体にフィットしていくという特徴があるんです。普通にそういうアイテムを展開しているヨウジヤマモト社はすごいですね。
―WILDSIDEのコンセプトと内田すずめさんの想いが込められた絵により、今までにない良さを持つコラボレーションになりました。
POGGY: ファッションって半年ごとにショーが行われていて、つまり、半年ごとに移り変わる。その流行を楽しむことができます。
車だと今は多分5-10年ごとですよね。
アートに関しては、人生が反映されるので最も長いと思っています。
ただ、ヨウジヤマモト社がやっている服作りは単なる流行ではなく、進化しながらもずっと同じ信念を持って続いている。もはやアートになっているんだと思います。
その揺るがない服作りの信念があることで、内田さんが描く絵とマッチするのではないでしょうか。
―今後の内田すずめさんの目標や展望はありますか?
内田:“絵”って続けないといけないと思っているんです。
途中で終わってしまったら、ストーリーも、見てくれる人たちの楽しみも終わっちゃうじゃないですか。自分の生活がある中で、絵を描くことを辞めない、ということがいちばん難しくて、でも最低限なんです。
だから、まず”続ける”ということを自分自身に誓っています。
その先の大きい展望があるかと言われると正直まだわからないです。
ただ、100年後でも200年後でも人が人である限り、今の私の気持ちも来世の人たちへちゃんと伝わると思います。自分が死んだ後にも作品が残り、その作品に私の想いが宿って、それが数百年後の人の気持ちも動かせたらいいな、と思っています。
POGGY:今回、内田すずめさんのお話を聞けて本当に良かったです。
ありがとうございました。
内田すずめ
アーティスト。
作品に共通しているのは、負の心緒よりも原体験から来る生気が感じ取れる点である。
Yohji Yamamotoと合作した服がパリコレクションで発表され世界各国で発売、2017年から毎年コラボレーションを継続している。
2020年、Adidas Y-3からアパレルが発売。2022年、be@rbrickとコラボレーション。
ギャラリー、国内外アートフェアなど展示多数。
https://www.instagram.com/suzume_uchida/
内田すずめコラボレーションアイテムページはこちら
https://wildside-online.jp/shop/r/r6004/