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Vol.11
Y’s for menの世界観を作ってきたスタイリスト大久保篤志氏の撮影秘話
スタイリスト 大久保篤志
インタビュアー 小木“POGGY”基史

1980年代以降、何度も<Y’s for men>カタログのスタイリングを担当してきた大久保篤志氏。
国内外問わず様々なロケを行いながら、Y’s for menの世界観を作ってきた大久保氏に、当時の撮影でのエピソードを中心にインタビュー。

 

―ヨウジヤマモト社との関わりの始まりはどういったものでしたか。

‘85-‘86AW Y’s for menのイメージカタログのスタイリングをしたのがヨウジヤマモト社との最初の仕事でした。
当時のヨウジヤマモト社のプレス担当の人からオファーの連絡を受け、その方から「カタログを作る前に一度、山本と会ってください」と言われました。それで渋谷に面接に行きましたね。
緊張しながら待っていたら、「エレガントなジャケットを着ていますね」という言葉とともに、山本耀司さんが現れました。
そして、「あなたの好きなフォトグラファー、アートディレクターと一緒に、好きなようにやってください」と言われて、それだけで終わったんです。
正直、すごいプレッシャーを感じたなあ(笑)
その後、ディレクターとして親交のあったダイアモンドヘッズの横山さん、フォトグラファーとして当時ずっと一緒に仕事をしていた森川くんに連絡し、すぐ準備に取り掛かりました。

ただ、実は依頼を受けたシーズンのイメージカタログは一度すでに撮影が終わっていたんですよ。
私が依頼を受けた時には、カタログとして印刷までされていました。
おそらく、出来上がりに納得がいかずに没になったと思うんですけど、没になって山積みにされているそのカタログを、当時のヨウジヤマモト社の本社で見た時、「これ、次失敗したらやばいじゃん」という気持ちになりました(笑)

撮影当日は、様々なアクシデントを乗り越えましたね。
「今までにない撮影をしたい」という思いから、府中の飛行場跡に雛壇を作って、自然光の中で48名ほどの大人数のモデルたちを歩かせて撮影を行いました。
ただ、当日雨が降り、強風でスタジオが壊れたりもして。
でも、いい具合に雨上がり感が出ていて、結果的にとてもかっこいい撮影ができました。

―その後、何度もY’s for menの撮影に携わってくださっておりますが、今回のコラボレーションTシャツに落とし込まれたY’s for menのヴィジュアルを撮影した当時の様子はいかがでしたか。

この撮影では、モデルをしてくれたジョー・マッケンナの圧倒的な雰囲気に飲まれちゃいましたね。
彼はニューヨークの一線でやっているスタイリストで、つまり同業者なんですよ。
撮影時に彼を迎えに行き初めて会った時、自身のボルサリーノを入れた紙袋2つを持ち、シャツ、ブラックデニムに自前のスニーカーで現れました。なんでもないスタイリングなんですが、完成されていましたね。
そんな彼を見て、当時はまだ自分のスタイルが定まっていなかったから、昼食を食べていたレストランのトイレで吐いちゃったんです。
今だったら大丈夫なんですが、当時はメンタル弱くて。

色んな面で、思い出深い撮影でしたね。
そして、このカタログの写真は今見てもやっぱりかっこいいですね。

―大久保さんがこのヴィジュアルを選ばれた背景を教えていただけますか。また、コラボレーションTシャツの感想をお聞かせください。

この写真を選んだのは、今、単純にこのストライプのスーツを着たいと思ったからです。
こういうのを今、本当に着たい。それだけ。だから選びました。
そして、約40年前の作品がTシャツになるなんて感慨深いですよね。
単純に嬉しい。生きていて良かったです。

―Y’s for menが13年ぶりにスタートする2023年に、WILDSIDE でコラボレーションをさせていただくことができ、大変光栄です。貴重なお話をありがとうございました。

Photos / 森川 昇



Profiles
大久保 篤志

1955年生まれ、北海道出身。 スタイリストの北村勝彦に師事した後、「POPEYE」、「an an」のスタイリストとして活動をスタート。
その後、雑誌、広告、音楽アルバム、また、俳優やミュージシャンなどのスタイリングを幅広く手がけ現在に至る。
1980年代以降、何度もカタログのスタイリングを担当。
2006年に自身のブランドを立ち上げた。

現在は、YouTubeチャンネル『OKUBOMEGANE』やInstagramにて、ファッションライフスタイルを発信中。
■公式YouTube
https://www.youtube.com/@okubomegane742/
■公式Instagram
https://www.instagram.com/okubomegane/