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Vol.13
WILDSIDEとのコラボピースに秘められた、M A S Uデザイナー後藤氏の想い
M A S Uデザイナー 後藤 愼平

WILDSIDEとのコラボピースをローンチしたM A S Uデザイナーの後藤 愼平氏。
そんな彼に、今回のアイテムに込められた想いをインタビュー。

 

―まずは簡単にM A S Uのスタートからこれまでの活動について教えてください。

後藤:M A S Uは2016年にブランドが設立されているのですが、当初は私自身は携わってはおらず別のデザイナーが担当していました。
2017年に初期のデザイナーが退任するタイミングでバトンタッチという形で参入し、リブランディングを行ったんです。
私が25歳になったときですね。
1stコレクションは、鳴かず飛ばずで5店舗もオーダーがつかなかったのを覚えています。
ですが、一部のバイヤー、周りの服好きな友人たち、そしてチームのみんなは気に入ってくれていて。
少しずつ地道に積み重ね、5シーズン目頃に、ようやく軌道に乗ったかな? という印象です。
その後は、東京での4回に渡るショー、イベントなどの様々なアプローチを行いブランドを成長させてきました。
その結果、FASHION PRIZE OF TOKYO 2024を受賞し、パリへの挑戦権を得たというわけです。

―今回のパリメンズファッションウィークのショーを終えられた率直な感想を教えてください。

後藤:何よりも、自分が想像していた以上のお客さまに来ていただいたのが一番の幸せでした。
見てもらえないことには何も始まらないですし。
もちろん、よいリアクションはありましたし、自身としても手応えを感じています。
ですが、満足したわけではなく同時に、"あぁ、ここをこうすれば、もっと良くなったな"とか、"まだまだ、こんなものじゃない"と振り返ったり。また、次に向けたプロセスも考えたりもしています。
総括すると、M A S Uというブランドがまだまだ良くなっていくと思える、そのスタート地点となるショーだったんじゃないでしょうか。

―後藤氏が作る服へのこだわりなどがあれば教えてください。

後藤:自分が作るアイテムが数十年後にヴィンテージになり得るか? という基準は特に大切にしていますね。 一過性の消費されていくデザインではなく、長年に渡り愛され、経年変化があったとしても成立するかどうか。
あとは、制作当初のインスピレーションが怒りや葛藤などのネガティブなものだったとしても、それを優しさや愛、ユーモアに変換して解決、アプローチを行い完成させるように気をつけています。

―後藤氏は’90年代のミスター・ハイファッション(注:かつて文化出版局より発行されていたファッション雑誌)がお好きだとお伺いしました。当時のモードな雰囲気のどのあたりがお好きですか。

後藤:ミスター・ハイファッションは私のバイブルですね。
現在は、当時よりも工夫が凝らされていたり、デザインされた服が多いと思うのですが、圧倒的に違うと感じるのはそれらを着る男たちが放つ味わい深さや色気です。
ミスター・ハイファッションの誌面に登場する男たちは、顔が整っていなくても色気を感じたり、優しそうな表情なのになぜか怖さがあったり、まるでダイヤモンドのような輝きを放つ少年など、とにかく色々な男の味わいを感じ取ることができました。
今の世の中は確かに綺麗ですが、画一化されすぎてしまっていて、そういった男たちは鳴りを潜めてしまったのではないでしょうか。
おそらくはコンプライアンスやモラルの見直し、仲良く平和が望ましいという思想がそうさせているんだろうなと。
誌面的にいえば、画質修正のしやすさ、カメラ技術の向上などもあるかもしれません。

あとは内面をデザインする服が多かったと思います。
ただ単に煌びやかで見せびらかす服じゃなくて、着るとその人がどうマインドセットされるのかを考えて服を作っていたような気がします。
それこそが今の時代に必要なアプローチではないのではないだろうかと考えたりしていますね。

ミスター・ハイファッションは、そんなようなことを思わせてくれ、何度読んでも都度、新しい発見をさせてくれる雑誌なんです。

―今回リリースされたWILDSIDEとのコラボピースに関して、ベースに選んだアイテムの理由やインスピレーションの源などを教えてください。

後藤:今回リリースされた3型のうちの1型は、ヨウジヤマモトの代名詞的存在でもある袴パンツです。
袴パンツが登場したYohji Yamamoto POUR HOMME 2012春夏のコレクションは、私自身がもっとヨウジヤマモトのことを知ろうと思った想い出深いシーズンでした。
学生時代に訪れた青山の旗艦店の静けさ、販売員の方に対応していただいた時の緊張感、白いシャツ、袴パンツのボリューム感を今でも覚えています。
お金はなかったけれど、どうしても何か買って帰りたくて水玉模様のソックスを買ったんです。今も変わらない青いショッパーに入れてもらえたのが嬉しかったですね。
今回、その当時は手が届かなかった憧れの袴パンツを天使の総柄で制作しました。
コラボ商品企画の打ち合わせの際に、ヨウジヤマモト社にて実際にショウで使用された袴パンツを試着させてもらった時は、当時の記憶が蘇り、胸が踊りましたよ。

WILDSIDE x M A S U ANGEL HAKAMA PANTS ¥69,300

残りの2型のトップスに関してですが、いちヨウジヤマモトのファンとして憧れのピースがブランドにいくつもある中で、ヨウジヤマモトとM A S Uの両者に親和性があるコレクションはどこなのだろうかと考えた際に、Yohji Yamamoto POUR HOMME 1996春夏コレクションについては純粋にフィットすると思いました。
私が思うヨウジヤマモトのコレクションの中で、「花と少年」からインスピレーションを得ているこのシーズンのコレクションに最も柔らかさを感じていて、そのムードはM A S Uと上手く掛け合わせることができると。
そこで印象的な牡丹柄と刺繍のカットワークをM A S Uのシグネチャーでもある、スパイキーブルゾン、コンパクトなフーディに落とし込みました。

―アイテムの仕上がりについての感想を教えてください。

後藤:既存のコレクションやアイテムにM A S Uなりのアプローチをさせていただき、胸を借りている立場ではありますが、双方のブランドのファンに影響を与えられるようなものになったと思います。


―今後のブランドの目標を教えてください。

後藤:自由で特別なブランドになりたいです。



―これからの活動を楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

Profiles
後藤 愼平 SHINPEI GOTO
1992年生まれ、愛知県出身。2014年に文化服装学院アパレルデザイン科メンズデザインコース卒業。
卒業後、デザイナーズヴィンテージアイテムを扱うLAILAに入社し、オリジナルブランドの企画・生産に携わる。
退社後、2018年秋冬よりM A S Uのデザイナーに就任。
FASHION PRIZE OF TOKYO 2024のグランプリを受賞。
M A S U official Instagram
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