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「時間は未来から過去へも流れていく」画家の内田すずめはそう述べる。
「過去は終わったものではなく、今も進行し
ている経験の一部だから」とも。
覚えのある人は、大事ななにかをうしなっ
たことがあるにちがいない。そして、大事ななに
かをうしなったことのない人は、おそらくいない。
引用元は、2026年12月6日(土)にはじま
り、同月26日(金)まで開かれる予定の内田
すずめの個展のために、内田本人が書いた「ア
ーティストステートメント」である。常識は、
「時間は過去から未来へ流れていく」と告げる。
ここでは常識がひっくり返されている。
過去はけして過ぎ去らない。失敗も成功も悲
しみも喜びも、失望も希望も、生きてゆく人間
の現在と未来に引っ張り込まれ、日々のふとし
た裂け目に顔を出す。そうして過去は生き直さ
れ、その都度、あらたな意味を帯びて、亡霊の
ように立ち現れる。「時間は未来から過去へも
流れていく」。









